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世界のすべての女を愛している|長島良三

台風がすぎ、空も青く、波打つカーテンの奥に洗濯物がゆれるなか、この数日間に読んだ一冊の本のことを書きます。

表現するものは体内にある

「世界のすべての女を愛している―ジョルジュ・シムノンと青春のパリ」、ジョルジュ・シムノン氏の作品をたくさん翻訳している方の書いた本です(2017年現在は、中古でしか見かけません)。

読み終わってみて、後味として残っているのは、「表現されたものは、自身の体内から吐き出されたもの」ということです。
創造力も体内から吐き出されるものですので、結局のところ、ある人間の行動からは、その人の体内に蓄積されたもの以上のものはでてこないということ。そのことを、しっかりと感じました。

ジョルジュ・シムノン氏のことは作品しか知りませんので、この本のおかげで、ほんの少しとはいえどのような人生を送ってきたのかを知り、自身の体験を物語の登場人物や骨格、細部にいたるまで、素材として有効活用しているんだということが、なんとなく伝わってました。

絵のような、音楽のような、文学

『モンド氏の失踪』にしても、気がつけば約300ページひきこまれて読んでいるのですが、全体を振り返ってみると、なにが書いてあるわけでもない。これがすごいことだと思います。

もちろん先が気になるので読みすすめていくのですが、一文一文が、心地のよいメロディとか、きれいな色だとか、そういったニュアンスのようなもののように感じてしまいます。

「世間では、小説などだれでも書ける、と考えられているようだが、それはとんでもない間違いだ。小説を書くには技術がいる。それも、非常に複雑な技術だ」と、シムノンは回想している。

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