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ドラッカー名著集6|創造する経営者(まえがき、第1章)

まえがきの雑感

このカリフォルニア州のクレアモントからのメッセージは、端的にまとめられていて全体像を俯瞰できます。

タイトルが目的と命題を表しています

本書の目的は「Managing for Results(成果をあげる経営)」→なすべき仕事は何かを見つける助けとなること。
本書の命題は「企業は、企業の外の世界すなわち市場で成果をあげるために存在する」
本書の一貫したテーマは「経済的な成果をあげることが、企業に特有の機能と貢献であり存在理由」
成果をあげるには、「仕事について体系的に考え、方向性と方法論と目的意識をもって仕事をする」

しかし本書は、私の知るかぎり、経営者が果たすべき経済的な課題を体系的に提示しようとした最初の試みである。そして、企業が行うべき経済的な活動を体系化しようとした最初の一歩である。

本書は3部構成

体系的な知識は、先人の力を借りて常人を助ける、成果をあげる能力を与える。有能な人間に卓越性を与える。以下の3部で「体系」を描こうとします。

1部は分析と理解。約170/300ページを占めます。

企業の現実。成果をあげるべき領域を分析。それらの領域と、資源や業績、機会や期待との関係。コストの流れと構造を分析。成果や資源が存在している外部の世界から見た企業。1部全体の分析を総合。

2部は機会に焦点を合わせた意思決定。約80/300ページを占めます。

事業の業績。潜在的な機会。新しい事業の開拓。

3部は成果に結びつける洞察と意思決定。約50/300ページ。

企業の理念と目標、求めるべき卓越性、優先順位の決定に関わる意思決定。機会とリスク、専門家と多角化、新設と買収――最適な組織構造への戦略的な意思決定。企業家的な意思決定のメカニズム。経営者とコミットメント。

第Ⅰ部 事業の何たるかを理解する|第1章 企業の現実

第1章では「企業の本業は三種類」「企業の現実についての仮説」を書いています。

企業の本業は3種類(同時に取り組む)

今日の仕事に対する体系的なアプローチ(おそらくこれが経済的な課題に取り組むための知識と方法論だと思います)があれば、今日の問題を時間をかけずに効果的に解決できるので、明日の仕事に取り組めると書いています。

  • 今日の事業の成果をあげる
  • 潜在的な機会を発見する
  • 明日のために新しい事業を開拓する

そして、企業に共通の現実は2つ。

  • 企業の成果と資源について
  • 企業自身の活動について

この2つについての仮説から、企業家的な仕事の性格と方向に関する結論を導き出します。

企業の現実についての仮説

(1)~(5)の仮説が成果と資源に関するもので、(6)~(8)の仮説が企業活動とそのコストに関するものです。

(1)成果と資源は企業の内部にはない。いずれも外部にある。

企業の内部にはコストセンターしかない。いずれも活動があってコストを発生させる。しかし、成果に貢献するかはわからない。企業の活動が成果を生むか無駄に終わるかを左右するのは、企業の外部にいる者。
資金や機械設備など知識以外の資源は独自の資源ではなく、科学技術から社会、経済、経営にいたる知識を活用する能力が、市場において価値のあるものをつくることができる。しかし、知識は普遍的かつ社会的な資源。

企業とは、外部にある資源すなわち知識を、外部における成果すなわち経済的な価値に転換するプロセスであると定義することができる。

(2)成果は、問題の解決ではなく、機会の開拓によって得られる

問題解決がもたらすのは通常の状態。成果を得るには機会の開拓のみ。

(3)成果をあげるには、資源を問題にではなく、機会に投じなければならない

問題は最小限に抑え、機会を最大化させる。

重要なことは、いかに適切に仕事を行うかではなく、いかになすべき仕事をみつけ、いかに資源と活動を集中するかである。

(4)成果は、有能さではなく、市場におけるリーダーシップによってもたらされる

利益は市場が価値ありとし、進んで代価を支払うものを供給して得る。価値あるものとはリーダー的な地位によってのみ実現できる。

リーダーシップは、事業戦略において特に重要である。

(5)いかなるリーダーシップも、うつろいやすく短命である

業績をあげる場の市場、資源になる知識、どちらも誰の専有物でもない。リーダーシップは一時的な優位性にすぎない。

そのような落ち込みから脱出することが、経営者の責務である。そのためには、事業の焦点を、問題解決にではなく機会に合わせなければならない。リーダーシップを再創造して、その他大勢への落ち込みから反騰しなければならない。惰力に代えて、新しいエネルギーと方向性を手にしなければならない。

(6)既存のものは古くなる

今日存在するものはすべて昨日の産物。今日の事業(資源、活動、組織、製品、市場、顧客)はすべて過去の意思決定と行動の結果。
物事は予想したとおりには起こらない。未来は常に違う。
あらゆる意思決定と行動がそれを行った瞬間から古くなり始める。通常の状態に戻すことは、昨日の現実に戻るということ。

経営者の仕事は、昨日の通常を、変化してしまった今日に押しつけることではない。企業と、その行動、姿勢、期待、製品、市場、流通チャネルを新しい現実に合わせて変化させることである。

(7)既存のものは、資源を誤って配分されている

企業は自然現象ではなく社会現象。社会現象は正規分布しない。

人事の問題についてもいえる。問題の大半は常に特定の場所や特定の社員が引き起こす。

業績とコストは関係がない。業績は利益と比例し、コストは作業の量と比例する。資源と活動は業績に応じてではなく作業の量に応じて割り当てられる。
利益の流れとコストの流れは同量ではない。利益を生み出す活動に意識的に力を入れないならば、コストは何も生まない活動、単に多忙な活動に向かっていく。資源や業績と同じように活動やコストも拡散する。
企業活動の評価と方向づけの見直しを常に行わなければならない。現在の事業において。昨日の洋服につぎを当てるほうが明日の型紙をデザインするよりも、危険なまでに易しい。

部分的な分析では、事実が誤って伝えられ方向を誤る。事業全体を一つの経済システムとして見ることによって初めて真の知識が得られる。

(8)業績の鍵は集中である

わずかな能率の向上が大きく業績を改善する分野に仕事と労力を集中する。人材は少数の大きな機会に集中する。

今日、効率性の原則のうち、集中の原則ほど守られていないものはない。

コスト管理においても、コストが最も発生している分野に集中せず、努力を分散させている。そのような一律的なコスト削減計画では効果は小さい。


企業経営に対する企業家的なアプローチは、これらの現実に対する認識からスタートする。
これらの仮説は事実に基づき分析によって検証する(自らの企業を理解するうえで必要な分析の基礎になる――企業家的な3つの活動――)。

自らの責任を真剣に考える経営者にとって、これらの仮説は、必要不可欠な手段である。しかしこの手段は、予め用意したり、使いやすいようにしたりしておくことはできない。自らが考え使わばければならない。この手段を設計して発展させ、使いこなすための能力こそ、経営者が当然のこととして身につけなければならないものである。