証人たち|ジョルジュ・シムノン
ジョルジュ・シムノン「証人たち」
ジョルジュ・シムノン氏の小説(メグレじゃない方)には、1ページ目から惹きこまれます。極度の緊張感が漂っています。異常に主人公と読者の距離が近いです。
バルザックの細部、ゴーゴリの詩的霊気、コンラッドの第三次元、プルーストの回想など、いくつもの技術が次から次へと駆使されているようにも感じます。
作者が主人公の中に入り、読者は主人公を外から眺めます。眺めていたはずが、読んでいると、主人公と同化しそうになります。
情景を浮かび上がらせる描写力。余計なことは書かないというライティングスタイル。
一見、余計なことばかりが書かれているようにも見えるのですが、多くの場合、人や空間など、なにかを立体化させるために書かれています。
そして、なんだかよくわからない一筆書きのような一文が、印象派絵画の技法のように、無数に積みかさねられ、ひとつのモザイクとして姿をあらわします。
「人間が、他の人間を理解できるのか」という問いを、冒頭から投げかけていきます。
しかし、「それは不可能なことだ」という考えにたどりつきます。
カテゴリは「芸術、文芸、フランス」と設定していますが、ベルギー出身の作家です。